バイヤーのひとり言 | 伝統を守り続ける体幹

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バイヤーのひとり言

伝統を守り続ける体幹

  • 2017/04/07

東京駅からの新幹線出張の朝ご飯は「〇〇屋のおにぎり」と決めている。
今回は、たこめしとえび天むすに、厚焼き玉子と10種のサラダ。

どのような作業フローになっているのか、今日は日曜で、朝7時半に買ったおにぎりが冷たく、粒がややかためだった。
東京駅構内のこの店はもうかれこれ七年近く利用している。はじめてのときは平日の朝。温かくて、ごはん粒がしっとりしたおにぎりと上品な味付けの具材に夢中になった。以来の利用だが、しかし。今日も含めてここ何回か、???となっている。何かが変わってしまったか。
いいものは変わらないでいてほしい、いい店はなくならないでほしいと思っても、そんな願いはたいていの場合まずかなわない。こういうご時世で、いいものを維持することは本当に難しいということ。

いい店、いいものは、ほかと差別化するために、ほかと違うアイディア、センスを構築している。それらが効奏して人気を得る。話題になり、“いい情報”が拡散する。売上が上がる。すると、品質を維持することより売上を上げることが優先される。できあがったせっかくのブランド価値が空洞化し、印象に残るのは、若くて可愛らしい女性店員の凍りついたような笑顔だけになる。

企業の理屈ってなんだろう。売り上げが上がっても、質を落としてでもさらに売り上げようなどとは、普通の感覚では思わないのだが、優先順位というものは、人のエネルギー配分を大きく左右してしまう。それと、もう一つぼくがどうしても気になるのは、いいもの、いい店が構築して認知された素敵なアイディアやセンスは、それ自体をもともと維持するためにどこか無理をしていたのではないかということ。差別化のためのアイディア=無理 は、努力の甲斐なく、数年の後にはグローバル化してしまうということ。一度満足してしまうと、また満足したくなる、いやもっともっと満足したくなるのに。

だから、いつも伝統はすごい、伝統にはかなわないと思う。たとえば京都。もちろん、全部が全部そうなっているわけはない。昔と同じようにやっているものが、恐らくほかの地域よりもわかりやすいくらい多いのではないかと思う。金沢あたりもいいが、郊外に近代的な設備を持つ大きな工場を建設するスペースがある分、当然もの作りはよくも悪くも変容せざるを得ない。京都には場所がない。もともと場所がないところから始まっている都。削り落とせるものは限界まで削り落とさないといろいろなものが成立しなかったはず。突き詰めて、切り詰めていいものを守る、そんなスタンスが、ケチだったり、高飛車だったり、ぶぶ漬けだったりという府外の評価になるから、京都人はせつない。

そんなふうになれるのは、歴史が彼らのなかに太くてしぶとい体幹をこしらえたからじゃないか。ときどきむかつくけど、話せばわかる、話せば真摯な思いを伝えてくれる。なんだ、最初から聞いておけばよかった。つまり、そういうことなんだね。
懇意にしている京都の知人の誕生会に招かれて京都へ向かいながらそんなことを思う。

バイヤー堺谷 徹宏

食品担当。
美味あるところどこにでも行くフットワークが身上。
担当カタログは「家庭画報のデリシャス宅配便」。
日本一の食品お取り寄せ通販をめざす56歳。
でも芋焼酎が好き、ラーメンはもっと好き……。

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