バイヤーのひとり言 | ランチの悩み〜京都人の真心〜

前のページに戻る

バイヤーのひとり言

ランチの悩み〜京都人の真心〜【京都・くいしんぼー山中】

  • 2017/04/19

京都・くいしんぼー山中のステーキ、鮮度がやばい!


日曜日の京都でランチ。
桜はまだ咲いていなかったけれど日中17度と暖かくて内外老若男女ひしめく祇園や河原町界隈でなく、ゆったりおいしいものが食べたかったので、少し離れたところの店を予約した。
個人的に、京都とラーメン、京都と肉食をテーマに、京都では極力ラーメンや肉、粉ものを探して食べることにしている。今回は、思いきってステーキにしてみた。
webで探した「くいしんぼー山中」は、京都駅から地下鉄、阪急電車を乗り継いで約20分、桂離宮の桂駅下車徒歩15分。閑静な住宅街を抜けていく。

これはいいぞ。ここには物見遊山の内外老若男女はきっこない。開店15分前に着いたので店の周りをうろうろする。駐車場には数台の車。看板は「仕込み中」。
11時半開店。すぐに予約客でいっぱいになる。地元の人気店だ。
近江牛のランチステーキコースを頼んだ。前菜のじゃがバター、スープ、サラダ、どの料理もしっかりした味付けで好感が持てる。目の前で肉をさばくシェフの慣れた手つきに見入る。大きなブロック肉や骨付き肉から余分な脂肪やすじを丁寧に取り除いていく。

目の前でいま切り分けたばかりの肉が皿に入れられて目の前に提示され、こちらですが、焼き加減は?とマダムが聞いてくれる。メインのステーキはミディアムレアで焼いてもらうことに。
魚の鮮度は生でも焼きでも素人目にもわかりやすいが、肉の鮮度は技術によって曖昧にされやすい。熟成肉のように長期保存されて新たな価値をめざしたものもあり、生で食べるようなシチュエーションもいまはほとんどないので、それが本当に新鮮なものなのか否か、おいしいのか否かがわかりにくくなっている。
こんなふうに刺身をふるまうように客の目の前でさばいた肉を、客の目の前で焼く京都人の心意気は相当素敵だと思う。ごまかしがない。
そうこうしているうちに肉はあっという間に焼き上がって目の前に。

箸で食べやすいようにカットされている。
肉の柔らかさ、脂の旨みが尋常ではない。新鮮なまま焼かれた肉は本当においしく、しっかり脂ものっているのにさっぱりしていて、がっつりいただいても食後のむかつきもない。肉という素材が持っている本来の力を体内に取り込めて、元気が満ちてきた。

おいしいものをおいしく使っておいしく出す。当たり前のことかもしれない。でも、そうでないことが多すぎる。この店は違う。
京都人の真心は、いつも最初からかゆいところを想定したうえで施されるからぐっとくる。

今回もまたまたぐっときてしまった。




京都・くいしんぼー山中のドーナッツハンバーグは、“追い飯”必須!


京都・桂「くいしんぼー山中」は一軒家のステーキハウス。

赤と黒のタータンチェックのランチョンが置かれた15席ほどのカウンターと3〜4家族がゆったり食事を楽しめそうなテーブル席。

観光客が多い地域ではないので、休日とあれば、地元の人とそのおいしさを知っていて車で乗りつける大阪あたりからの常連客が集う。予約しなければ並ばなければならないほど。
閑静な住宅街にあって、この行列はやや奇異に見える。この店を知らなければ、地域として見た場合に、ここにこんな場所になぜ人がこんなにずらりと並んでいるのだろうと普通に不思議に思う。

客の目の前でシェフが肉をさばく。
ごまかしのないパフォーマンスがあって、おいしい素材をおいしく調理して供する技があって、もう一つ、関西では老舗のステーキハウスではグランドメニューにあるという、ドーナッツハンバーグin半熟目玉焼きのためだと思う。

ぼくは、ステーキを注文したが、カウンターでたまたま隣り合わせた30歳前後の青年がこのドーナッツハンバーグを注文していた。
ぼくの目の前に運ばれてきたステーキはカットされていて箸でぱくぱく食べやすくておいしくて申し分なかったのだが、ぼくよりも少し遅れて運ばれてきた彼のメインディッシュに意識が釘付けになった。

知らない人だし、真横だからじろじろ見るわけにもいかず、ちょっとどきどきしながら、ちらちらと見ていた。
アンダーソース。しゃばしゃばしているのでこれは恐らくステーキソースと共通の甘辛いやつに違いない。ドーナッツ状のハンバーグの真ん中の穴に半熟の目玉焼きが座っている。箸で肉をほぐすと簡単にほぐれる。
彼が箸を動かすピッチが上がった。
うまい、うますぎる……。ひとりごとがこぼれてくる。
一瞬ぼくが目を離している隙に、彼は目玉焼きの黄身をつぶしていた。黄身がとろりと流れ出している。
すかさず、シェフが彼に言った。「そこにご飯を入れてそこのスプーンですくって召し上がってください」。
すると、青年は「いま、絶対にそうしようと思っていたんです!」と主張する。
少しおいて、「これまでの生涯の中でこんなにおいしいハンバーグは食べたことないです。ぼく、東京に住んでいますが、実家は京都なので、いまこっちへ帰ってきていて。こんなにおいしいものが食べられるなんて」……。ほとんど、うわごとのように彼のモノローグは続いた。
シェフはそれ以上何も言わずにこにこしながら肉をさばく作業に戻った。

ああ、これもなんて真心。黄身と肉の旨みが甘辛ソースとからまりあう。そこへ白いご飯。なんとも贅沢なランチ。
ソースの粘度が低いからこそ、追い飯にできる。どこまでが計算されているのかわからないが。
カウンターもテーブル席も満席。開店して1時間もたたないうちに長蛇の列。オーブンではハンバーグがじゅくじゅくと順調に焼き上がってくる。

今度は、絶対にハンバーグ。あの幸せなマリアージュを!

バイヤー堺谷 徹宏

食品担当。
美味あるところどこにでも行くフットワークが身上。
担当カタログは「家庭画報のデリシャス宅配便」。
日本一の食品お取り寄せ通販をめざす56歳。
でも芋焼酎が好き、ラーメンはもっと好き……。

読みもの一覧へ