使ってほしい!この逸品 | 【バイヤー江口の出張報告】 三重県・伊賀「長谷園」

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使ってほしい!この逸品

【バイヤー江口の出張報告】 三重県・伊賀「長谷園」

  • 2017/09/01
 

「オリジナルのごはん炊き土鍋を作りましょう!」

会社ロビーで、「長谷園」さんにお声がけをしてから一年。実際にどんな方々が、どのように作ってくれているのか……。この眼で確かめるべく、いよいよ産地を訪ねることにしました。

東京から新幹線で名古屋に出て、そこから高速バスに揺られて1時間半。さらにその奥の窯元を目指します。道中、車窓を流れる田園風景は、山懐に囲まれた静かで気持ちのいい場所。水をたたえた田んぼを、燕が飛び交う梅雨時の三重県・伊賀を訪れました。

 
 
  
  
 
 

産地〜地元の土を生かしたものづくり〜

原料の粘土は、三重県・伊賀の西方に広がる同県・島ケ原産。ひんやりとして、肌理(きめ)が細やか、しっとりした粘りのある印象です。鍋底から覗く、あの生成りっぽい鍋肌になるとは、この段階では想像もつきません。

古琵琶湖層といわれる地層から採取されるこの粘土は、耐熱性が高い土。炭化した植物を多く含み、焼成する過程で多孔質化することで、蓄熱性に富んだ遠赤効果をも発揮する土鍋に生まれ変わるのです。練り歯磨きがチューブから出てくるように、粘土が押し出されてくると、傍らの職人が筒状の粘土に糸を掛け、手際よく切り分けられていきます。

 
 
  
  
 
 

工程をみていきましょう

工程@ 〜まずは成形です〜

切り分けられた粘土は、型に入れて成形します。空気が入れば、割れにつながる気を遣う工程。熟練のまなざしに、スキはありません。白い粘土型に丹念に込められた粘土は、ベルトコンベアー状になったヒーター(写真右)の中を、型ごと1時間半ほどくぐらせると、型から外れやすくなるしくみです。

 
 
  
  
 
 

工程A 〜蓋を削ります〜

職人が「鉋(かんな)」と呼ぶL字型の削り器を、型から抜かれたばかりの滑らかな土の表面に滑らせると、轆轤で回転する蓋が「しゅるしゅる」と削り取られてゆきます(写真左)。

こうすることで、土の表面積を増やし、蓋の蓄熱性も高まるそう(写真中央・奥)。

蒸気が抜ける蓋穴をあけて、この工程は完了です。蓋と持ち手それぞれの縁を、布状のものを撫でつけて、エッジに丸みをつけて仕上げます(写真右)。

 
 
  
  
 
 

工程B 〜真剣勝負の本体削り出し〜

本体も蓋と同じように、一つ一つ手で削られて、成形しています。今回のオリジナル土鍋は、既存の商品とは異なり、専用の粘土型がありません。基本の土鍋用の型を使って粘土を成形した後、「鉋(かんな)」を駆使して最終形に仕上げるのです。

百戦錬磨の職人でさえ、この通り。姿勢を「く」の字に屈めて、本体を真横から見ながらの微妙な調整をしています。毎回が真剣勝負です。

 
 
  
  
 
 

こだわりの「ハンドルレス」フォルムは、職人の経験と知恵とが生かされた形状です。職人は、取材する私の目の前でキレイに削ってみせてくれましたが、作業をしながらつぶやくように聞かせてくれたのは、持ち手の確保と削りだしの曲線を両立される、最終形状にたどり着くまでの試行錯誤のあらましでした。

そのさりげない語り口とは裏腹に、ひしひしと感じる完成に至るまでの険しい道のり。探究心溢れる職人の心意気と意地が見事に結実しています。各工程を担うこだわりある職人たちの手によって、「ごはん炊き土鍋」は成し遂げられているのだなぁと、今更ながらしみじみします。

 
 
  
  

この断面をみるとわかるように、持ち手が無い分、しっかり手が引っ掛かるように深めに削ってもらっています。蓄熱性を保つ本体の厚みもよくわかります。

 
 

工程C 〜火加減不要への道〜

今回のオリジナル土鍋は、火加減が一目瞭然。素焼きの土の部分と、釉薬のかかった部分との境目が炎の大きさを示す基準になっているのです。

上手に炊き上げる火加減・「強中火」の炎の大きさを確認した上で、素焼きの部分には釉薬がかからないよう、撥水剤を施します。事前に割り出した高さを指し示す鍋底からの水準器を傍らに、ラインを入れ、撥水剤を塗布していきます。この撥水剤は、焼成時には揮発して土肌がきれいに現れてくるというわけ。

金尺の目盛りに目を凝らす職人の真摯な姿勢を垣間見て、改めてこうしたこだわりに支えられてこその商品であることに、じんわり胸が熱くなります。

 
 
  
  
 
 

工程D  〜施釉に光る工夫〜

撥水剤を乾燥させたのち、釉薬を施していきます。鍋肌は釉薬にドボンと付ければ釉薬もかかりますが、内側への施釉は「ポンプ」と呼ぶ、工夫が光ります(写真中央)。天を向いた管から釉薬を噴き上げる仕掛けで、見込み部分に釉薬を吹き上げて施釉するのです。

 
 
  
  
 
 

工程E 〜焼成します〜

長谷園では、窯は全部で6つ。一番大きな窯で350〜400個をいっぺんに焼成できるそう。ただ、最近のメディア露出の反響もかなり大きく、フル稼働でも注文に追いつけないくらいの人気だといいます。

 
 
  
  
 
 

工程F 〜完成です〜

やっと完成です。見た目にもスッキリとして、コロンと丸みを帯びたかわいらしい仕上がりになりました。

ごはん炊きにはもちろん、これからの鍋の季節にも活躍してくれそうです。

お米は、三合炊きまで対応しますが、商品と一緒に届く「ごはん炊き方 きほんのき」には、玄米、無洗米、分づき米、そしてお粥の炊き方といった簡単なレシピが記載されていますので、ご活用ください。

 
 
  
  
 
 

最後に。〜お米の持ち味を存分に味わって〜

 

火加減不要で、吹きこぼれ無し!なので、レンジ周りも汚れません。火にかければ、約30〜40分でおいしく炊き上がります。使い始めには、お粥を炊くことを忘れずに。

 
 
  
  
 
 

後記

メーカーである「長谷園」さんは、一(いち)ユーザーである私の独断と偏見を丁寧に読み解き、汲み取って、カタチにしてくださいました。すべての工程には必ず職人がいて、細やかな気配りと、強いこだわりをもって、万全なものづくりを心がけてくれていることも身近に感じられる出張になりました。今回のリポートで、多くの方々の手を経て、この「ごはん炊き土鍋」が出来上がっていることを知っていただけたと思います。

ちょうど、このリポートを書き上げている今日、納品に向けたお知らせメールがメーカー担当者さんから届きました。リポート冒頭で登場したあの青々とした田んぼも、今では黄金色になり、頭垂れ始めているとのこと。いよいよ新米の季節がやってきますね。

この「ごはん炊き土鍋」で、お米本来の味を是非味わって欲しいと思います。炊き上がりの蓋を開けたときのみなさんの笑顔を願いつつ、筆をおきたいと思います。

 
 

番外編

 

今回、オリジナル土鍋はパッケージも手作り(経費節減とも言う)。パッケージに貼るシールの「土鍋」の文字。何度書いたことでしょう(汗)

大きな紙に書いたり、シール大で試したり。いろいろな筆でも書きました。

これだけ「土鍋」と書いたのは、人生初。書きながら笑えてきてしまいました。

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バイヤー江口 隆一

「ジャンルはワイド、セレクトはニッチ」(汗)。
手仕事やインテリア、器にファッションなど、ジャンル広く担当。モノの背景に滲む、作り手の工夫や心意気に惚れるタイプ。
「機能がカタチになっている道具」の潔さ、わかりやすさが好き。売上もニッチで、悩み中。。。

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